骨盤の歪みを正せば、不妊症が治るでしょうか?
そんな質問がありました。
「骨盤の歪みと不妊症との関連性が計りえないので、それはなんともお答えだきません」と回答。
このケースでは、子宮機能としては問題がない。いくつかの医学的治療を受けてはいるが、骨盤の歪みでも正せば、うまくゆくかもしれないと思って、相談にいらした次第。
話をうかがうと、数年前に一人目を生んだあとから妊娠しないということなのですね。その妊娠は様々なアクシデントが発生して大変で、産後もしばらく体調が悪かったとのこと。
たしかに、そういうケースにおいては、産後の骨盤の回復が悪く、骨盤の形状や、骨盤可動性の鈍化など、長期に問題を抱えたままものが多い。
骨盤内に不自然な筋緊張等が発生>>慢性的局所的血行不良>>骨盤内臓器環境の悪化
そのような状態を、私は体の中にできた日陰と比喩しています。
骨盤を矯正して、骨盤内の環境がよくなれば、骨盤内の臓器にも、良い影響があるかも知れない。つまり、日陰の部分の日当たりを良くしたようなものですね。
日当たりがよくなって、それが、希望した効果につながるかは、話が別なのですが、それを、やってみる価値があるタイプは存在します。
これまで数百人の妊婦さんの腰痛パターンをみてきました。
妊娠による腰部の形や負荷の変化による、いわば妊娠性腰痛は、腰部の痛みというより殿部付近の痛みとして感じるようです。パンツのゴムラインより下の痛みです。骨盤帯痛とも言われます。
治療としては、側臥位(横向きに寝ること)になっていただき、殿部、後股関節と太腿などのエリアにマッサージを加えると症状が緩和されます。
さて、スウェーデンのGoteborg大学産婦人科が、ブリティッシュ メディカル ジャーナル電子版に2005年3月に発表したレポートによると、このタイプの痛みには鍼治療が有効だとのことです。
私の場合には、本人の希望、あるいは、医療マッサージで十分な効果が得にくい場合に、鍼の治療を行っています。経過jはおおむね良好です。
妊娠以前に、ヘルニアなどの腰痛を経験した方は、妊娠中の腰痛に敏感な傾向です。妊娠によって再発、または、悪化したと考えるのでしょう。
しかし、そのような方も、ほとんどの場合は病的腰痛ではなく骨盤帯痛であり、過去の腰痛歴は関係ないものがほとんどだと思われます。不安を抱かなくて大丈夫でしょう。
また、妊娠中に骨盤帯に痛みがある人が、とくに難産であるとか、出産の機能に差がある印象もありません。
逆子(骨盤位)のお灸治療は、次の妊娠検診の数日前に行うと都合がよい。正確な効果の確認ができるからです。
腹部を触れば、およそどのような格好でいるか見当はつきますが、超音波などで確認するのが確かです。
私の経験からだけ述べれば、逆子のお灸で効果がある場合には、大抵の方は1回、2回で改善しています。治療の最中から、お腹で胎児がボコボコと動く実感があって、その動きは外から見ていてもわかるくらいのこともしばしばです。
検診の結果は電話で連絡してもらいようにお願いして。逆子が治ったかどうか、把握するようにしています。この結果は、次の妊婦さんへの説明に反映させています。
さて、骨盤の開閉具合という観点からだけ述べれば、逆子は骨盤が開きすぎている場合に起こる傾向を感じます。妊娠によって、少ずつ骨盤は開いてくるのですが、その開きがよすぎると逆子になる印象です。
そこで、逆子が治ったら、ほんの少し骨盤を締めておく、ちょっとした工夫をすると良いのではないかと考えているところです。そういう工夫が必要か、どのような方法が適当か、まとまりましたらお知らせしたいと思います。
ゆるむ しまるのリズムは、自律神経の交感神経 副交感神経の作用と考えられます。
活動モードの交感神経 しまる
休養モードの副交感神経 ゆるむ
一番短いリズムとしての 「ゆるむ しまる」 は呼吸です。呼吸では、吐くときにゆるみ、吸うときにしまる。
自律神経失調状態や心身症の方には、呼吸が苦しい(息苦しい)感じ、胸が苦しい感じなどの症状がよくありますが、これは呼吸による「ゆるむ しまる」のリズムが変調して呼吸と同期していないためだと考えます。
次のリズムはその人なりの、作業と休憩におけるリズムでしょうか。作業によってしまりすぎると疲れた実感になる。そこで休憩をいれると、ゆるんでくるので、また作業ができるという具合です。
1日のリズムでは睡眠と覚醒でしょう。時間軸を大きくみれば、月ごとのリズム、季節ごとのリズム、いくつものリズムによって、ゆるんだりしまったりくりかえしている。大病をすると、3年くらいかけて落ちつく感じがあるので、そういう周期のリズムもあるかもしれません。
体調を整えるということは、つまりはこの「ゆるみ しまり」のリズムをきっちり明確に打ち出すということともいえます。痛みをとるとか、歪みを正すということは、それが目標ではなく、「ゆるむ しまる」の望ましいリズムを回復させる手段として行うものだと考えます。あくまでも身体本来のリズムを取り戻すこと。
さて、女性の場合には、生理周期による「骨盤のゆるみ しまり」を問題にする傾向がありますが、まずは身近な着眼点として、呼吸パターンはどうなのかという点から着手すべきでしょう。最近では息を詰めている(止めている)人が多い感じです。そういう場合は呼吸によっての骨盤の「ゆるみ しまり」も活発とはいえません。まずは呼吸パターンを改善する取り組みを行う。
同時に、睡眠と覚醒のパターンへの取り組みを行う。生理周期における骨盤のパターンは、それからですね。
最近話題の骨盤を操作すると痩せるとか太るとかいう話も、骨盤を単純に操作すればよいと言うものではなく、このようなリズムを視野にいれてデザインしないと結果につながらないわけです。
今回も骨盤の話を一席。
「弛む」と「緊る」って、それぞれ実感として、どんな感じでしょうか。
しまる感じとは、緊張して体に力が入っている感じがあるでしょう。身体の中心に向かって力が集まっている感じです。とりあえず今、試しにやってみて実感してみてください。骨盤も含めて「ぎゅー」と求心的な方向へ固定されます。
緊張しすぎると、硬直という感じで良くないのですが、前向きな緊張といいますか、これから自発的に何かをしようとする時の、適度な緊張感は「しまり」です。
ゆるむ感じは、そのわざと緊張させた力を脱力した時の感じです。「ホッ」としたときの感じ。そのときに起こった力の向き(ベクトル)を強調するとさらに弛んだ感じになります。
つまり、骨盤も含めて、身体の「ゆるみ」や「しまり」というものは、関節の形の問題ばかりではなく、たとえば「精神的緊張 ストレス」など精神的、心理的状態を反映している要素もあるわけです。
では、どのような状態が良いのかというと、「ゆるんだ」ままでも、「しまったまま」でもいけません。その場面の必要に応じて、適切に「しまり」、「ゆるみ」を切り替えられること。これを弾力性といいます。それは身体ばかりではなく、心の弾力性も視野に入ったものです。
しまりとゆるみには、リズムがあります。一日のサイクルなら、活動している日中は「しまり」、休息のための夜は「ゆるみ」。これがうまくゆかないと、昼にだるくてやる気がないとか、夜に眠れないという感じになります。
また女性の場合には生理周期によっても「しまりゆるみ」があります。生理時はゆるみですから、理想は休息期なのです。生理のときにうまく弛まない部分があると、そこに「痛み」を感じることがあります。生理時の頭痛などがこれに該当すると考えます。