先日のNHKためしてガッテン。テーマは更年期の辛い症状であり、更年期のホルモン補充療法について取り上げられておりました。
見ていて、思わず苦笑したのが、「これまでは、ホルモン補充療法は発がんリスクなどが指摘されていたが、それは古い研究データであり、最新の研究データでは短期なら問題ないと判明した。だから癌が心配などいうのは古い。新しいデータを知ってください。」という趣旨の件です。
私は、その論文もデータも実際に存じませんが、詭弁と言うか、データの都合のよい解釈であることは、少し考えれば明白と思いました。
短期なら大丈夫というところがミソです。番組では3年位のことを言っていました。
そもそも、癌は易々と短期に仕上がるものではないでしょう。
1個の癌細胞が「癌」と言えるような体裁に成長するのには、ある程度の年月を要すると思います。
つまり、最新の研究でわかったのではなく、NHKが古いと表現したそのデータも、そもそも短期では統計差が発生していなかったと考えられます。当たり前な事です。
「短期なら」という断りつきですから、長期ではリスクがあると認めているわけで、だから長期の場合には定期的な検診が必要だとも言っております。
ここでも忘れていけないのは、検診は病気の存在を知る術で在って、病気の予防法や治療そのものではないとい言うことです。
だから検診を受けていれば安心などと受け取られるような表現は、そもそも言えたものではありませんが、番組ではそういう演出である印象を受けました。
また、検診を受け続けることによる身体的、経済的、負担も十分に伝えていないと感じました。
補充療法にはリスクがあるわけですから、検診を続けていると、ある年月くらいからグレーの検査結果がでる確立が上がり、検診以上の検査を受ける機会が増える潜在負担の可能性があります。精密検査の結果「白」でもそれはその時点の話しですから、その次からは、ある程度の水準の検査が要求されるかもしれません。
そのような番組の構成に対する懸念を裏付けるように、今日来院された患者さんがこの話題に触れて、「私もホルモン補充療法は発がんの心配で敬遠していたのだけれど、番組をみたら新しい研究で大丈夫と言うし、症状が緩和されたり骨密度が上がったりメリットがあるから、ちょっと興味がわいてきた」と切りだしてきました。
私としては、どのような治療にもメリット、デメリットは存在すると思っています
ですから、ホルモン補充療法そのものを肯定、否定することは出来ません。すくなくても、それを判断する材料が私の中に少なすぎます。
しかし、今回のような番組構成は、一種のミスリードだと思います。話題を切りだしてきた患者さんにはそのことをお伝えしました。
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