産後の自律神経失調
産後には、「産後の欝病」のように全く気力がなくなり、通常の生活ができなくなるケースはよく知られています。
そこまで重症でなくても、もっと身近にあるのが自律神経失調状態です。
症状は、頸や肩のこり、眩暈(ふらつき、ふわふわ感)、吐き気、便通異常、不眠など様々です。
これらは、育児や家事などの心的疲労と肉体疲労の継続的な負荷によって起こるものだと考えられます。
さて、産後自律神経失調の治療の着眼は、頸部の緊張をどのように緩和させるかにあります。
「肩こり」はいうまでもなく、眩暈感や吐き気などの原因も頸部の緊張にあると考えられるからです。
まず、「眩暈(めまい)感」ですが、これは頸部の筋緊張により首の動脈が軽く圧迫され続けることで、軽い脳貧血(脳循環障害)が頻発するのだと思われます。
同じく吐き気も、頸部の筋緊張が迷走神経を刺激することによって起こると考えます。
実際に、マッサージなどで頸部を軽く弛めると症状は軽減されます。
頸部や肩部を蒸しタオルで温めたりすることも効果的です。
風邪の漢方薬として一般に知られている葛根湯も、頸部を弛める効果がありますので、有効な場合があります。
いずれにしても、このケースには鍼灸の治療により改善が期待できます。
お困りの方は、一度お近くの鍼灸院へご相談ください。
出産直後の骨盤調整は、どんなことをするのでしょうか。
まず、出産によって腰部や骨盤帯に痛みがある場合には、その治療を行います。
多用する手法としては、手首の内側のツボに皮内鍼という鍼シールを貼って、痛みをコントロールしています。
手首のツボで、腰周りの痛みが軽減するとみなさん驚きますが、予想を超えて有効例が多い印象です。
恥骨などに痛み(恥骨乖離)がある場合にはベルト等で固定しますが、これはごく希なケースです。
私のこれまでの経験では全体の1パーセント未満です。
さて、ここからが本題ですが、その後、骨盤の開閉状態や左右の歪みなどを観察し、必要があれば補正のための姿勢や動作を指導します。
骨盤を引き締めるための特殊な体操などもあわせて説明します。
整体やカイロプラクティック的な、いわゆる矯正手技はほとんど必要ありません。
むしろ、内側から自然に整うように、諸条件をコーディネートする感じです。
これがまったく狙い通りにゆくと、例えばこんな感想が聞かれます。
(立位で、骨盤を引き締める手法を行う)
ああ、なんか自然に骨盤が引き締まるように力が入ります。きもちいいですね!
肛門の辺りもギューッと自然に締まってきます。
わざと力を入れているわけでなく、勝手に自動的にそうなるんですね。
なによりも、こうして正しく立っている感じは、とても気持ちよく、ずっとこの状態で立っていたい感じ!
つまり、外側の形(歪み)は問題ではなく、内的な力学バランスといったものを変えるのです。