妊娠初期の脈というのは、風邪の脈にもにていますが、風邪の脈ほど硬く激しい相ではなく、やや早め、均一でコロコロと楽しげな雰囲気の脈です。
あるとき、腰痛の女性が来院しました。
脈を診たときに、どうも妊娠していることも考慮すべきかも知れないという勘がよぎりました。続いて腰部も診ましたが、通常の腰痛にありがちなパターンではなく、いよいよあやしい.......。まあ、あくまでも私の主観であり、「勘」の領域ですが。
「妊娠されている可能性はありませんか?」
「いいえ、まったくありません」
「そうですか。でも私の経験から申し上げれば、この感じは妊娠の初期に近いので、一応それも考慮して治療をさせていただきます」
「いいえ、絶対にありえません。でも治療の内容はお任せします」
数日後、再び来院されて
「妊娠していました。そういえば、生理もきていなかったので、薬局で買ってきたテスターでチェックしたら、陽性。昨日、病院へ行ってきました。驚きました!」
驚いたのはこっちのほうです。だってあれだけ「妊娠はない」と断言していたのですから。
腰痛は、妊娠初期の、生理的感覚だったのでしょう。