整体と聞くと、多くの人は体の歪みを正しい状態に戻す行為だと考えているようです。
また、そのような単純な着眼で整体を行うところが多いものです。
しかし、高度な整体は、曲がっているものを、ただ直すような単純な板金術ではありません。
整体の目的は、全力を出し切ることができる心身の状態にすることです。
歪みを正したり、病気を治したり、痛みをとることがテーマではありません。
全力を出し切るというのは、実は難しいものです。
とくに、自分自身を、病気だとか、体が弱いとか、そのような状態と思い込んでいる人に、全力を発揮させることは難しいでしょう。
ところで、たとえそのような人でも、自分の家が火事になったら、無我夢中ですごいことができるかも知れません。
火事場の馬鹿力といいますが、そのときの状態がいわば「整体」です。
病気の人でも、体の痛い人でも、そのときはすごい力を発揮する。
無我夢中だからすごいことができるのではなく、
むしろ、その人の常の意識状態が、体を使い切らない方向へ固着しているのではないでしょうか。
つまり、整体とは究極的には無意識の意識改革を伴うものです。
そのきっかけとしては、手技ばかりでなく、火事のような状況刺激でもよい。
そして、全力を発揮できなくなっている「思い込みのようなもの」をどう処理するかがもっとも重要です。
矯正は、いわば心に対して行うもので、身体の歪みなど本当はあまり重要ではないのです。