2月6日のブログ 踵の痛み続き
所見としては良くなっているが、本人は頑なに良くなったことを認めない。
このままでは、本人が見切りをつけて、他を模索するだろう。
経験上、効果は十分に上がってると確信している。
そこで、心理的駆け引きをすることにした。こういうことも治療の一環である。
「わかりました。私としては効果が上がっているといていますが、あなたがまったく良くなっていないとおっしゃるなら、その言葉を信じるしかありません。なによりあなたのお体なのですから、あなたのおっしゃる方が真実でしょう。今日で、治療を打ち切りましょう。効果が上がっていないなら、このまま継続するのは無駄です。」
「えええ? もう1回受けてみます。それでよくならなかったら止めます。」
「いいえ、効果を感じないなら、見切りも必要です。所見では、今までよりかなり良くなっていると確信します。しかし、このレベルでも症状の改善を感じないというなら、私の目指す方向性が間違っているということです。だとすればこのまま私の方針で続けても、自覚症状は変わらないでしょう。今日で止めましょう。」
「ええ、でももう1回受けてみます。」
「あなたがそうおっしゃるなら、ではもう1回行いましょうか。」
それから3日後。入ってくるなり
「奇跡です。症状がなくなりました。前回の治療のあとから症状がなくなり、装具もつけていません。なんで急によくなったのでしょうか」
「急に良くなったのではなく、それまでの治療で少しづつ改善していたのです。でも、こういう症状は多少ぶり返したり、軽減したりすることがあるので、そのような経過が普通だと思っていたほうが良いでしょう。」
何の変哲もないやり取りの中に、年季による駆け引きがあり、それは治療の方向性を左右する重要な要素なのである。
この患者さんが、「よくなった」とひるがえったその理由がお分かりになるだろうか?