新聞で読んだのですが、鍼灸の治療後に、死亡する事件がおこったってご存じでしかた?
患者さんが雑談の中でそう尋ねてきました。
私はその事件を知らなかったので、早速ネットで検索。
読売オンラインより
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100109-OYO1T00609.htm?from=main3
大阪府池田市の針きゅう院で昨年12月、患者の女性(当時54歳)がはり治療を受けた直後に体調不良を訴え、死亡していたことがわかった。
池田署は、はり治療のミスが原因だった疑いがあるとみて業務上過失致死容疑で同院を捜索し、関係者から事情を聞いている。
同署によると、女性は昨年12月15日、はり治療を受けた後に「気分が悪い」と訴え、院内のトイレで倒れているのが見つかった。翌16日朝、搬送先の病院で死亡した。
司法解剖の結果、死因は脳に酸素が十分に供給されないことによる低酸素脳症で、同署は、はりが肺の周辺を傷つけた結果、呼吸不全に陥った可能性があるとみている。
(2010年1月9日 読売新聞)
日経ネットより
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20100109AT5C0803C08012010.html
大阪府池田市内の鍼灸(しんきゅう)院で2009年12月、患者の女性(当時54)がはり治療を受けた直後に容体が急変し、死亡していたことが8日、捜査関係者への取材で分かった。大阪府警は治療中のミスが原因で女性が死亡した疑いがあるとみて、業務上過失致死容疑で同院を家宅捜索し、関係者から事情を聴いている。
捜査関係者によると、女性は肩こりのため、同院に定期的に通っており、普段からはり治療を受けていた。昨年12月15日、はり治療を受けて同院を退出した直後、「気分が悪いのでトイレを借りたい」と引き返してきたという。その後、トイレ内で倒れているのが見つかり、救急車で近くの病院に運ばれたが、16日早朝に死亡した。(07:00)
さて、報道からすると、警察では「気胸」を疑っているという印象を受けます。
確かに、事故として「気胸」は考え得るケースですが、しかし、程なく倒れてしまうような重篤な気胸であるならば、胸痛や呼吸困難のような症状をさしおいて、単に気分が悪いというような症状であるものなのでしょうか?
日経の方の記事では、鍼灸院を退出したあとに、トイレを借りに引き返してきたとあります。
つまり、その時点では、気分が悪く吐きそうな「悪心」が主な症状だったと考えることができます。
その時点で気胸を疑うような状況ではなかったことも推測できます。
では、施術に関係があるとしたら、なにが起こっていたと言えるでしょうか。
可能性としては、施術の後に起こりうる強い副交感神経亢進状態が考えられます。
いわゆる「脳貧血」で気分が悪いというものです。
この場合、血圧の低下、顔面蒼白、冷汗、悪心などが主な症状です。
通常は、短時間でその状態は自然回復して、とくに悪影響を残しません。
鍼灸臨床においては、普通に起こりえる想定内の反応です。
しかし、きわめて希なケースとして、そのような症状が非常に極端に起こることも考えられます。
自律神経の急激なシフトによって大幅な血圧の低下などのショック状態が起こった。
それによって脳循環が低下して、脳が一定時間以上低酸素状態に陥った。
この事件は、そんなところが理由なのではないかという気がします。
真相解明はこれからですが、いずれにしてもきわめて特異なケースと思われます。
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