70歳台女性。半年まえから踵が痛む。整形に通院。起床時や、座位から立ち上がった最初に痛む。通常の歩行の時には痛まない。
足裏の腱鞘炎だと言う診断で、痛みを軽減するために装具まで作ったが改善しないので、鍼の治療を受けたいと来院。
足裏や踵には、腫脹や発赤なし。押して痛む場所もない。
そのかわり下肢の数箇所に、押すと耐えられないほどの痛むポイント(トリガーポイント)がある。
おそらく、踵や足裏に原因はなく、下肢にあるトリガーポイントが原因であると思われる。
ところで、今回の話題は、その詳細ではない。
この方は、なぜか改善した事実を認めたがらないタイプなのである。
3回目の治療日
「いかがですか」
「ちっともよくなりません。治るのでしょうか?」
「まだ2回ですからね、結論を出すのは早いと思います」
「鍼だとすぐに結果が出るのかとおもっていました。前回の治療のあとはなんだか症状がなくなって、すっかり治ったかと思いました。装具も2日間しませんでした。でも今日は元に戻った感じです」
「と、いうことは、前回の治療の後は少し良かったのですね?」
「いいえ、治ってません」
「いま、前回の治療の後は、治ったかのように思えたとおっしゃったではないですか?」
「でも、今日は同じだから....先生!、治りますかねぇ 私?」
「前回の後に効果を感じるようであれば見込みがあると思います。」
「でも効かなかったのですよ」
「先ほどの話だと効果があったと思いますが。まずは少しでも改善の兆しを認めて、ああ!1-2割良くなったかなとか、そういうことを積み重ねて治るものではないでしょうか。10あるものがいきなり0にはなりませんよ。」
「だって、ちっとも良くならなかったのですから10は10のままです」
「2日間装具をつけづに過ごせたのは、痛みが緩和されていたからでしょう?」
「ええ、でもちっとも効かなかったのです。」
これ以上のやり取りは不毛だと思い、ここで話題を変えた。
この方には、踵や下肢の問題とは質の違うものがあるのだろう。
よって、このまま踵の症状を対象とした治療を続けた場合には、おそらく治らない。
治らないといって、病院や治療先を次々にかえる「ドクターショッピング」を繰り返す人には、このようなタイプの方が多い。