外科の手術なら、傷口はより少ないほうが良いし、手術に要する時間もより短いほうが上手といえます。
これは鍼灸も同じことで、鍼の本数はより少ないほうが技術を要しますし、所要時間もより短くて効果があればそのほうがよいでしょう。
私はそういう方向性で技術を洗練してゆく努力をしています。
ところが、普通の方のニーズはすこし違った感覚であることが多いようです。
鍼の本数はより多いほうがより内容が濃いと思われがちです。また時間も長いほうが丁寧だという印象になります。
つまり、治療を量で判断する基準の発想が主流なのですね。
先日も、「なるべくたくさんの鍼を使ってほしい」という希望の患者さんがいらっやいました。
希望ですから、不可能でない部分についてはなるべくその意向にそえるような配慮はいたします。
しかし、私にしてみればそれは「あえて下手な方法でやってください」と聞こえるのです。
当院は所要時間で料金が算定される方式です。
したがって、時間が長い場合には料金も比例して増えます。
それは経営的には歓迎です。しかし治療の内容という面からみれば、簡潔に適当な時間で終えたものが一番良い。
量を求める患者さんには、一応そいう言う話をさせていただいておりますが、それでもほとんどが手数、時間の多い方を選択なさるのが現実です。