私も1年に1度くらいは風邪らしい風邪をひきます。
この1週間、風邪をひいて、声が出にくかったので、患者さんは「先生、ひどそうだ」という印象を抱き、帰りがけに「お大事に」などとお言葉をいただく日々でした。(苦笑)
このような時によくある質問が、
「先生は、風邪をひいたときに、ご自分で鍼などをして治すのですか?」
結論からお答えすれば、おおむね「NO」です。
それは自分では手が届かず、必要なところに鍼が出来ないというような理由ではありません。
私は風邪症状にはあまり介入しないほうが経過がよいと考えているからです。
風邪の時の症状というのは、壊れた結果ではなく、体が風邪という感染症から体を防衛し、回復するための正当な自発反応と見ます。
例えば発熱は免疫系の活性化に必要なプロセスですし、鼻水は、鼻粘膜を洗浄する機能。咳は気管の異物を排泄させる機能です。
初期の段階で、これらの防衛反応を抑える事は、回復に「マイナス」になる可能性があるということになります。
事実、発熱など薬で抑えると、風邪である期間が長くなるという報告を読んだことがあります。
呼吸器の専門医は、風邪の初期の段階で咳止めは処方しないという話しを聞いたことがあります。咳を止めると肺炎のリスクが高まるからだそうです。考えてみれば当然です。
多くの方は、風邪は初期の段階で薬を飲めば軽く済むという認識ですが、これはおおむね誤りです。
症状を抑えるというのは、体の回復反応を抑えることであり、抑えたことで自覚症状が軽く思えても、実際はその方が、罹患期間が長かったりするものです。
見かけの症状を軽くすることと、治すことは違う事なのですね。
さて、今回の場合には、1週間は無介入で経過を見てました。
1週間くらい立つと、免疫の主役が代わって抗体などが生産されてきます。
治療や工夫で介入するならこの時期くらいからが適当でしょう。
丁度この時期に、痰が絡んで、寝しなに咳き込むことがあったので、2日ばかり自分で必要な鍼治療をしました。
指先のツボに刺激を与える簡単な方法なのですが、終わった途端に喉や気管が弛み拡張して、呼吸がとても楽になるのがわかります。自分で体験するたびに感心しますが、なかなかシャープな効果です。
シャープな効果だったりするから、なおのこと「いつから介入したら、体の回復にとってメリットがあるか」が重要なポイントとなります。
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