患者さんからいただいたメールの引用です。
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「腰痛の原因はストレス」と特定して自分で納得できたのは、かえって救いでした。
腰が痛み始めたら、ストレスが過剰にならないように(先生のお言葉を借りれば→)引き算すればいいんだ、と。
とにかく腰の痛みから解放されたくて「針を刺してくださーい!」と来院しましたが、その後、体に関して自分の中でどこか「脳内革命」(?)が起こっていますのは、とても愉しいと思います。
また長々と失礼いたしました。
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引用終わり
日常経験する痛みなどの不調。
その原因は、突き詰めてゆくとその人の「癖」にあるといえます。
姿勢の癖
動作の癖
物事の捉え方、考え方の傾向など頭の使い方の癖
心の動き方の癖
などです。
姿勢や動作が、足腰などの痛みに関係するということは多くの方が理解できます。
当院でも、患者さんは、そのような説明はよく納得されるようです。
しかし、物事の考え方や、心の動き方が深く関係するという話になると、理解することが少し難しいようです。
例えば、腰痛があり、過去に病院で「椎間板ヘルニア」と診断されたことがあるという人の、「ありがち」な例です。
そのようなケースにおいてほとんどの方が、「自分にはヘルニアがあり、そのために慢性腰痛が継続している」と考えています。
病院において、医師からそのような説明をうけ、その説明を納得したからです。
しかし、そんな診断をわざわざ受けなかったら、あるいは今の慢性腰痛はないかもしれません。
多くの人は、その診断によって、「自分は腰が悪い=腰はつねに保護しなければならない=腰に無理をさせない=無理をさせればまた痛くなる」というような自己暗示のサイクルに陥っていることが多いからです。
このようなケースを私は「診断の呪縛」(広い意味での自己暗示)と考えています。
そもそもヘルニアであるということと、「腰痛」という症状に、どのくらい相関関係があるかは「不明」です。
画像診断で重度なヘルニアが発見されても腰痛など感じないケースは多くあるといわれます。
また、手術でヘルニアを処理しても、腰痛が改善しないケースもよく聞かれます。
私はヘルニアと腰痛は分けて考えるのが現実的だと考えます。
さて、人はヘルニアという診断を案外「大病」のように受け止めています。
しかし、ヘルニアなどとわざわざ特定してみても、では手術をしないケースのヘルニアが、どのように治療されるか、現実を見れば「湿布と薬と牽引」。
整形で行われる他の腰痛への手当てとまったく変わりはありません。
治療の現状からみれば、特別に分けて考える必要など、全くないと思われます。
皮肉めいた言い方をすれば、わざわざ高度な検査をして、「ヘルニアです」という烙印をおして、患者さんに呪縛をあたえて放置する。
その結果、患者さんは「悪い自己暗示」の悪循環にはまり、腰痛がおきやすい傾向が継続してしまう。
そんな構図なのだと思います。
実際には、この話がにすぐに理解できる方はあまりいません。
「そのような話は整形での説明と違いますし、常識ともちがっていて理解できません」
そんな感想が一般的です。
無理もありません。そのような回答こそ常識的です。
しかし、私はむしろ不思議なのです。
ヘルニアが原因で腰痛だと深く信じる方が、では何故に鍼灸に来たのでしょうか?
私は「腰痛とヘルニアとは別に考える。だからこの腰痛には効果が期待できる」という主張をしています。
一方、患者さんは、ヘルニアによって腰痛が起こっているという説を省みようとはしません。
であるなら、鍼でヘルニアを治そうとして来院したのでしょうか?
いいえ、多くの場合にはまず腰痛を改善しようとしてくるのです。
説明は理解できないといいつつも、実は腰痛だけを分離して治療できると考えている「本人自身」の思考には気づけないのです。
私の経験から言えば、それに気づけた方は、慢性腰痛にも変化が起こるものです。
物事の、受け止め方や考え方の癖、それに伴う心の動きは、腰痛をはじめ、身体の不調を考える上でとても重要です。
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