妊娠中に腰痛を経験する人の割合は半数以上と言われています。
しかし、ほとんどは生活に支障のない程度で、何か治療を受けなければならないというケースは、そう多くないと思います。
さて、腰痛の治療にみえられた妊婦さんに病歴を訊ねているときに、ちょっと妙なことに気付きました。
過去に「椎間板ヘルニア」をした経験のある人がなぜか多い印象です。しかも、ある地域からおいでになる方に多い傾向があるのです。
そこで、どこの病院でそういう診断を受けたのかと質問してみたところ、ほとんど同じ整形外科だということがわかりました。
患者さんいわく、「私の友達も腰痛でそこに行ったら、ヘルニアだって言われたんです。あそこの病院は腰痛はなんでもヘルニアといわれると噂していました。」
落語に、なんでもかんでも葛根湯(風邪などに処方される代表的な漢方薬)を処方する藪医者の話がありますが、葛根湯医者ならぬヘルニア医者の存在があるのかと、ちょっと可笑しくなりました。
どんな症状で病院へ行ったのか、どんな検査をしたのかと質問すると、下肢症状はなく、ただ急に腰が痛くなって受診した。腰の単純レントゲン写真をとった。そしたらヘルニアだと言われたという話です。
そのときに本当にヘルニアだったかどうか、わかりません。ただ、話の内容から推察すれば、譲歩しても「ヘルニアの疑いもあるね」くらいの表現が妥当で、「ヘルニアです」と断定するだけの根拠はなかったのではないかと思います。むしろ、ヘルニアではなかったのではないかというのが率直な印象です。
さて、私が問題だと思うのは、その診断の正確性の話ではありません。むしろヘルニアと過去の診断された方の、ヘルニア経験呪縛が問題です。
「過去にヘルニアをしたことがあるから、私は腰が弱く、つねに腰を庇ったり、注意が必要だと」いう潜在意識に縛られつづける現実です。
この呪縛がために、きっと、他の妊婦さんと同様レベルの腰痛であっても、過剰に心配になり、治療に見える方の割合が多くなっている可能性も否定できません。
そこで、究極的な私の仕事は、その呪縛を解くことです。
あなたは、ヘルニアではなかった可能性が高いという私見とその根拠を説明します。
そして、「ヘルニアと診断を受けたことがある人は、その記憶に支配され、いつまでも腰に自信がもてない。しかし、それは自分で自分の行動を制限している自縛行為。あなたはむしろヘルニアでなかった可能性すら高いのだから、もうそういう考えから心身を解放してあげましょう」と。
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