私が以前参加したことがある「医療従事者が学ぶ骨盤メンテナンス」の講座の中で、妊娠中に骨盤ベルトをすることで、妊娠中毒症(現在では妊娠性高血圧症候という)を予防できる可能性についての言及があました。
講師は、とこちゃんベルトの考案者である 渡部信子 助産師です。
そこでの説明は、
この病気は妊娠後期になんらかの原因で子宮動脈が収縮することが原因だが、そのひとつとして、骨盤が緩みすぎ子宮が下垂して動脈に影響を与えていることが考えられる。この場合ベルトで固定すると予防できる。
という内容でした。
婦人科の医師にその話をしたら、笑っていましたが、当院(鍼灸院)が扱った症例で、骨盤を固定することが有効と思われるものがありました。
その妊婦さんは5年前に一子目を出産していますが、妊娠30週目から浮腫と蛋白尿により入院し、その後状態の悪化により妊娠34週で緊急に出産している経緯があります。
今回の妊娠が判明したときに、その経緯から「あなたはハイリスク妊婦」と、最初に受診した医師からはっきりと断言されたといいます。
私の勤務する産婦人科の医師も「そういう経緯がある人なら、おそらく今回も同じになるだろう」と言っていました。
この方には、妊娠判明から骨盤を固定することを勧め、本人もすすんでそれを行いました。
また定期的に、もしくは何らかの愁訴があるときに、症状に応じた鍼灸などの施術を行いました。
妊娠中は異常な所見はほとんどなく、妊娠後期に貧血と、すこし子宮が下がってきているとの指摘があったようですが、帝王切開にて3,100グラムの男子を無事出産するにいたりました。
心配された高血圧や蛋白尿などは、最後までまったくなかったとのことです。
このような経過に、主治医も含め、「良い意味で意外な結果であり、実はかなり心配していた」という趣旨の感想を述べていたようです。
当院にも、「鍼灸などの施術は、体だけでなく、精神的な部分も楽になったので本当に支えになたと思う。私のように一人目に妊娠中毒症になると、二人目の妊娠が怖い気持ちが生じるが、私のような事例があることももっと知ってもらえたらよいのにね」とお礼の言葉をいただきました。
この例をもって、ベルト固定が効果があったとすることはできません。
しかし、このような対処の有効性をもっと検討することに意味があることを考えさせます。
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